ピアノに憧れた頃

もう今は2児の母親になっている娘が小学3年生になって間もないころのことでした。幼稚園年少の頃から習っていたピアノを「お母さん私、ピアノやめるわ」ときっぱりと言ったことがありました。以前から娘がピアノがあまり好きでないことがわかっていた私でしたが、続けて欲しいと思っていたのでそのままにしていたのです。でもその日の娘の様子からこれ以上は無理だと悟った私は「いいよ」とだけ短く答えました。本当は残念で残念で仕方なかったのですが、私の返事を聞いた娘の嬉しそうな表情は今でも忘れることができません。私ができなかったことを娘にさせていたのかもしれません。
実は私は子供のころからピアノに憧れていたのでした。今日ほど世の中が豊かではなかった時代、田舎のそれもそれほど裕福ではない家で育った私にはお稽古に通わせてほしいとは言えませんでした。たまたま我が家には小さなオルガンがあり、それを自己流で弾いて少しは気分を紛らわせていました。6年生の時何かの折にそのことを担任の先生に話したことがありました。それがきっかけで時々先生から学校で教えて頂いてとても嬉しかったのを覚えています。
阪神淡路大震災の折の我が家のリフォームの時にもうピアノはいらないねと知り合いにあげてしまいました。あの時はもうピアノにはなんの未練もないと思ったからです。ピアノ買取業者に買い取ってもらおうとも考えました。しかし娘も息子も結婚で家を出て、リタイア後の主人との穏やかではあっても何の変化もない暮らしをしていてふっと思いました。「ピアノやろうかな」と。すぐに楽器店で電子ピアノを購入し近所の先生の所へ通うことにしました。何年かを本当に自分でもびっくりするほど熱心に練習したものでした。年齢が年齢ですからそんなに上達するものではないことは自分でもわかっていました。それでも少しずつ上達できるのは大きな喜びであり励みにもなりました。今は先生についてはいませんが、自分の暮らしの中で充実した時間を持てることは本当に幸せなことだなと感じます。
何十年ぶりかの先日の小学校のクラス会でお会いしたご高齢の元担任の先生は耳がお悪いということでしたが、両手でピアノを弾く仕草をしながら「やってる?」と私に聞かれたのです。私も同じような仕草をしながら「はい」と首を縦に振って応えました。先生はあの頃の私を覚えていて下っていたのです。ありがとう先生、今もピアノが好きでいられるのは先生のおかげです。ピアノに憧れたあの頃の自分を愛おしいとさえ思います。そして大事な私の思い出です。

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